極・ウイスキーノート

ウイスキーについて調べたことの共有と、カフェバーの経営で感じたことをつらつらつづっています。

鉄道オタクが作った、ウイスキーの基準『クラガンモア』


Cragganmore 12years old
scotland-highland speyside
alc.40%vol.
singlemalt whisky


謎多きウイスキー蒸留所運営の天才ジョージ・スミスがクラガンモア蒸留所を設立したのは1869年の事だった。
スペイ川のほとりに立ち並ぶ最近のウイスキーブームの火付け役となった蒸留所は、ほぼ彼の華麗なる運営手腕の恩恵を受けていると言っても過言ではない。例えばグレンリベット、マッカラン、ダルユーイン、ウィショウ、グレンファークラスなどがある。


また、彼は蒸留所に鉄道を引いた事でも有名である。出荷時の利便性を高めるためや良水を求めたためなど諸説あるが、純粋に彼が鉄道好きだったということも少なからず理由としてあっただろう。そう言った由来もあってか、クラガンモアのラベルには蒸気機関車が描かれている。


気になる天才が手掛けたクラガンモアの味わいは、分かりづらく、そして奥深い。
カスミソウ、シリアルのようであり、スペイサイドっぽいフルーティさもあるようで、僅かにスモークを感じない事もない。


これをウイスキーの権威であるニコラス・モーガン博士は、学校によくいる物静かな生徒のようだと表現している。質問責めにするのではなく、根気強くその微かな声に耳を傾ければ、その驚くべき魅力に気付く事が出来ると。彼はその努力の結果、クラガンモアに微かに薫る林檎と梨の風味を見つけてきた。


そして、これらの味わいは、古くから使われてきた一つの指標であるクラシック・モルト・シリーズで、最も中間でバランスが良いと評価されている。喩えれば、クラガンモアがウイスキーにおける北極星である。


天才が生んだスペイサイドの至宝であり、すべてのウイスキーの基準となる。それがクラガンモア。




極貧からの世界一のビッグブランドへ『アードベック』

「from poor to world wide big brand」


ARDBEG TEN
Scotland-Island of Islay
single malt alc.46% vol.
MHD


1815年、アイラ島南部の小さな岬にアードベック蒸留所が設立された。「アードベック」は、ゲール語で「小さな岬」の意味。


2015年で創業200年を迎え、ボウモアやラフロイグと並びアイラの雄と呼ばれているが、その道程は波瀾万丈そのものだった。酒税法改正で原価の30倍近い税金がかけられたり、1981年や1996年など操業停止を何度も経験している。


その極貧時代の有名な逸話がある。
新しい所員が蒸留所を訪れた際に、壁に靴の空箱がかかっていた。これを不思議に思い箱をどけてみたら、そこには電気ブレーカーがあった。要はブレーカーカバーを修理するお金にすら困っていたのである。それが今、オーナーはルイヴィトンと同じ母体のMHDである。良いものはいつの日か評価される。


そして何より操業再開が1997年で、まだ20年そこそこしか経っていない。まだ新生アードベックは始まったばかりだ。これからの成長を伴に体験していくことが出来るのである。


アードベックの味わいは、まさに「癖があるがハマる」アイラモルトを体現している。小さな岬に吹く爽やかな潮風の薫りと、微かな柑橘系の薫り、そしてこれがアイラモルトと言わんばかりの強烈なスモーキーさを持つ。チョコレートやシナモンスパイスのような仄かな甘い薫りを探す楽しみもある。


華麗なる転身と、強い個性を持つオールドルーキー。それがアードベック。


アイラモルトの女王『ボウモア』

Bowmore 12years 「Queen of Islay malt」


Scotland-island of islay
Alc.40vol.
Single malt whisky


アイラモルトの女王ことボウモア。
女王といえば、ボウモア蒸留所はアイラ島で唯一エリザベス二世が訪問したことでも有名。


ボウモア蒸留所は1779年創業で、日本で言えば安永8年、徳川十代目将軍家治の時代からある由緒正しい蒸留所で、No.1vaultこと第一貯蔵庫は世界最古。
ゲール語で「大きな岩礁」の意味を持つボウモア。風が強い日には海抜0mの第一貯蔵庫はもろに潮風をうけ、これがボウモア独特の潮の薫りとなる。
1994年よりサントリーが完全オーナー化しており、実は日本とも関係が深い。


その味わいはアイラモルトの蜂蜜のような甘味や、潮風を感じさせるスモーキーさなどアイラモルトウイスキーの特色をすべて満たしている。
柑橘系のフルーティーさやダークチョコの様なビターさも併せ持ち、水割りやハイボールでも腰砕けにならない個性がある。